Uの倉庫 -U's storage-

ようこそ。ここはスキビのファンブログです。原作者様・出版社等各関係先とは一切無関係です。二次創作を扱っていますので、二次創作・同人という言葉や、また、一部桃色な表現もありますので、それらを不快と感じる方は立ち入りをご遠慮下さい。

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[SS-01]深夜の邂逅 page03 【END】

2ch落し物>[SS-01]深夜の邂逅

page03




心地よい振動と、微かに聞こえるエンジン音に誘われるように目が覚めた。
「えっ……。あれ?敦賀さん…?あれ???」
私、どうしちゃったんでしょうか?
運転中の敦賀さんに恐る恐る現況を確認する。
敦賀さんは「控え室で寝ちゃってるのを見つけたから、送ろうと思って。」と
笑顔で事も無げに仰ってくれたけれど、迷惑をかけまくっているこの状況に
私は今すぐ土下座で詫びたい衝動に駆られた。

助手席に腰掛けたまま、土下座の代わりにペコペコと繰り返し下げようとした頭を
片手で押さえられて「もうすぐ着くからそれまで休んでていいよ。」と言い含められる。
逆らえるはずもなく、かといって言われた通りに再び寝ることができるわけもなく、
大人しく振動に身を任せることにした。

シートで揺られながら、そっと横目で敦賀さんの顔を窺う。
私がこうして車に乗っているということは、つまり敦賀さんに抱えられたってことなのかと、
そこに思いが至り、恥ずかしさに顔に血が上るのを感じる。
──この人のことだから、いつかみたいに何食わぬ顔して平然と
お、お、お姫様抱っこ、した、のかな…。

自分の中でお姫様抱っこといえば、それこそ物語の王子様が愛しいお姫様を抱き上げる、
そんな特別な時のものだ。
それを一度ならず今回も…?
いやいや、フェミニストな敦賀さんにとってお姫様抱っこなんて、段差で手を
差し伸べるのと同じくらい当たり前のことで、特別なものではないのだ。
だから例え今夜もそうだったとしても、私のことを特別扱いしたわけじゃない。

ちくり。

小さな小さな棘が心に刺さった、そんな気がした。
え?何で?
敦賀さんにとって私が特別な女の子であるはずなんてないのは、わかりきっていることだ。
…いいえ待って。敦賀さんを本気で怒らせることが出来るという意味では
特別かもしれない…。かつて大魔王と化した敦賀さんを思い出し、思わずぞっとする。
そういえばあの時だって……───。
そうやって、私は心に刺さった棘のことを考えないように、目を逸らすように、
次々と他愛もないことを考え続けた。

***

車の中で目を覚ました最上さんが平謝りしようとするのを手で制して、
着くまで休んでていいよと声をかけると、彼女は大人しくシートに身を沈めた。
ちらりと横目で窺っていると、顔色を赤くしたり青くしたりまるで信号機のようだ。
──…一体何を考えているんだか。
俺が、このまま君を連れ去りたいと考えていると知ったら、君はその顔色を
赤くするだろうか…いややっぱり青くなるんだろうな……。
埒も無い自分の考えに苦笑が浮かびそうになった時、車はいつもの場所に辿り着いた。

何度も頭を下げながら帰って行く最上さんを見送り、車の中に戻る。
彼女が消えた方角を見つめたまま、自分の唇にそっと触れる。
寝ている彼女にキスをした、その時に感じた吐息の甘さが思い出された。
──馬鹿だな、俺は。
ハンドルに顔を伏せて自嘲する。
キスなんてしてしまえば、ますます欲が出てしまうことなんて
わかりきっていたじゃないか。

頭ではこれ以上はいけないと分かっていても、心と体が裏切る。
本心を自分に見せ付けるかのように止まらない。
それでもこれ以上はとブレーキをかけようと足掻く自分もいる。
──それにしてもよくあそこで止まれたよな、俺。
“敦賀蓮”の自制心に心から拍手を贈りたい気分だ。

──いつか……。もしいつか俺が自分を許せる日が来たら。
その時はどうか君の傍にいさせて?
彼女の消えた暗闇を祈るように見つめ、未練を断ち切るように
空の月を見上げてから、俺はアクセルを踏み込んだ。

***

帰宅が深夜になってしまった私を、おかみさんの心配そうな顔とお小言が待っていた。
心配をかけてしまった申し訳なさと、それだけ自分を思ってくれる優しさに心が満たされる。
「それにしても、」とおかみさんがお小言を終えて別の話を振ってきた。
「本当は男の人と会ってたんじゃないのかい?」
おかみさんはちょっと意地の悪そうな笑いを浮かべてそんなことを言う。

「やだ、おかみさん。敦賀さんはそんなんじゃないですよ。」
体の前で両手を振りながらそう返した私に、おかみさんのにやにや笑いが深まった。
「敦賀さん、ね…。あの色男かい。」
そーかそーかと口の中で呟きながら私の肩をポンポンと軽く叩き、
応援するからね、などとよくわからないことを言いながら
おかみさんは自室に向かってしまう。

「もう、おかみさんたら!違いますってば!」
慌てて言葉を返すと、おかみさんはひらひらと手を振りながら
「早く休むんだよ」という言葉を残して自室に入ってしまった。
「もう…本当に違うのに……。」
小声で呟きながら、おかみさんの後を追うように自分の部屋へと向かう。
部屋に入り、着替えるために上着を脱いで初めて気が付いた。
「この香り…敦賀さんの…。」
私の服には敦賀さんの香水の匂いが移っていた。
そうか、おかみさんてばこれに気が付いてたんだ…。

その残り香はまだ傍に敦賀さんがいるようで、更に香りの沁み付いた
服を纏っているという事実に、まるで抱き締められているような錯覚を起こす。
その感覚は軽井沢での、敦賀さんに抱き締められた、あの出来事を鮮やかに
脳裏に蘇らせた。
カーッと頬に血が上り、熱くなる。
何だかすごく恥ずかしくなって、少し乱暴に服を脱ぎ捨てて着替えた。

いつもなら心が安らぐはずの敦賀セラピーも、今夜はなぜか逆に落ち着かなくなる。
──……ううん、本当はわかってる。私、敦賀さんのこと…。
でも、まだ、ダメ。まだ、怖い。
だからお願い。まだ気付かせないで。まだ、気付かない振りをさせて…。

窓から空を見上げ誰にともなく祈る私を、月だけが見ていた───。

[了]



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